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サイテックジャーナル
1999年11月5日号


PCでDVD


 サイテックジャーナル11月1日号でアメリカの「e-クリスマス」について紹介しました。日本で年末といえばお歳暮ですね。今年のお歳暮は「e-セイボ」なんて呼ばれるかも知れません。この「e-ナントカ」という言葉,これからますます頻繁に聞くことになるような気がします。今のうちに権利を押さえておくと一儲けできるかも知れません。

 今回はネット通販の続きを書く予定でしたが,ちょっと気分を変えて他の話題を紹介します。


 みなさんDVDというのを知っていますか。DVDビデオとも呼ばれています。見た目は音楽用CDと同じような円盤なのですが,音楽ではなく映像(もちろん音も)がデジタル信号で記録されています。これを専用のDVDプレイヤーで再生します。DVDプレイヤーはCDプレイヤーと同じような外見をしている装置で,多くのものはCDプレイヤーとしても使用できるようになっています。

 このDVD,かなり前から存在していたのですが,あまり広まっているとは言えませんでした。しかし最近比較的よく見かけるようになりました。少し前に戦略的にソフトの値段が下げられたようで,映画などはビデオ(テープ)よりも,安く買える場合が多いようです。新作でも4〜5千円程度のものが多いです。またソフトの数も増えてきました。もちろん現時点ではまだビデオに比べて圧倒的に少ないですが,古い作品も数多くリリースされています。

 DVDはただ単に今までのビデオテープがディスクになっただけではありません。特徴を書き出すとそれだけで何ページにもなってしまうので詳細は省略しますが,デジタル映像なのできれいである(何でもデジタルであれば良いとうわけではありませんが,この場合はデジタルなのできれい)とか,例えば映画の場合,メイキングシーンや予告編が収録されていたり,1枚のディスクで字幕版と日本語吹き替え版を切り換えて楽しんだりできるとか,さらに映画館と同じ立体的で迫力のある良い音で楽しむことができる,等の特徴があります。

 さらにCDと同じように光を使って信号を読みとっているので,何度再生してもディスクが劣化することがありません。ビデオの場合,繰り返し再生したり,特定の場面で何度も一時停止したりするとどうしてもテープが劣化してしまい,画像にノイズが入ったりしてしまいます。DVDではこのようなことは起こりません。気に入ったシーンは安心して何度も繰り返して見てください。

 安くて情報がたくさん入っていて耐久性もある,加えて保管スペースもテープより少なくても良い。DVDは多くのメリットを持っています。また,近々発売されるソニーのプレイステーション2にも採用されることが決まっています。個人的には年末から来年にかけて一気に広まっていくのではないかと思っています。1年後には,レンタルビデオ屋がレンタルDVD屋になるのではないかと思うくらいです。


 さて,このDVD。再生するためにはDVDプレイヤーを買ってきてテレビにつないで見ることになります。しかし他にも再生方法があります。パソコンでDVDビデオを見ることができるのです。

 パソコン,特にデスクトップパソコンにはCD−ROMドライブが装備されています。最近のパソコンの中には,このCD−ROMドライブに代わってDVD−ROMドライブが装備されているものがあります。DVD−ROMにはCD−ROMよりも多くのデータを記録することができ,またドライブ装置自体の値段はそれほど変わらないので,今後CD−ROMはDVD−ROMに変わっていくのではないかと言われています。百科事典ソフトなどデータ量が多いソフトでは,すでにDVD−ROMで販売されているものもあります。

 映画などのDVDビデオには,先に書いたように映像がデジタル信号で記録されています。デジタル信号といえばパソコン。DVD−ROMドライブが取り付けられているパソコンをDVDプレイヤーとして利用し,映画等を見ることができるのです。

 DVD−ROMを装備したパソコンには,ほとんどの場合DVDビデオ再生ソフトがついています。このソフトにはビデオと同じように再生や巻き戻り等のボタンが付いています。これらのボタンを操作してパソコンのモニタで映画を再生するのです。DVD−ROMがついていないパソコンでも,別に買ってきて取り付ければOK。ノートパソコンでもOKです(ただし,ビデオの再生にはかなりのパワーが必要なので,デスクトップ,ノートを問わず,古いパソコンや能力の低いパソコンではうまく再生できない場合があります。あとから取り付ける場合は自分のパソコンで再生ができるかどうか確認してからにしましょう)。


 パソコンでDVDビデオが見られることが分かりました。しかしそれだけではありません。パソコンのモニタで見るDVD映像は,DVDプレイヤーとテレビでみるDVD映像よりもきれいなのです。ここから先はちょっと技術的な話になるのですが,できるだけわかりやすく書きますので,どうかがんばって読んでください。また,わかりやすくするために,細かい表現や数字などはちょっと正確でない部分もあります。ご了承ください。

 テレビの映像は人間の目にはなめらかに動いている動画に見えますが,実は静止画が高速で紙芝居のように入れ替わって作られています(これは映画でも同じ)。テレビの場合,その入れ替わりのスピードは1秒間に30枚です。入れ替わりが非常に高速なので人間の目にはなめらかに動いているように見えるのです。

 また,テレビの画像が走査線という線で作られていることを聞いたことがあると思います。走査線は512本あり,画面の左右をまさに走っています。画面左上からスタートし,右に到達すると1つ下に下がり上から2番目の線を同じように画面左から右に書いていく。これを画面一番下まで繰り返して1つの画像を作り出しているのです。

 1秒間に30枚の静止画を表示するということは,1枚の画像を1/30秒以下で表示しなければなりません。つまり1/30秒で走査線を512本走らせなければならないのです。これはかなりのスピードです。

 ご存じのようにテレビの映像信号は電波で送られています。この映像信号はアナログ信号です(ちなみにビデオテープの信号もアナログです)。信号を送るスピードには限界があります。1/30秒で走査線を512本走らせるというのは,かなり苦しいスピードなのです。そこでどうしたか。走査線を間引くことにしました。1枚目の画像では512本ある走査線のうち,奇数番目の線だけ書きます。そして2枚目の画像では偶数番目の線だけ書きます(少し前にプールで泳ぐ複数の人を上から見た映像を使って説明しているテレビのCMがありました)。このようにすると1/30秒で半分の126本の走査線を書けばよいことになります。これならば1秒間に30枚の画像を表示することができます。スムースな動画を表示することができます。

 しかしこの方法には問題点があります。この方法では走査線が間引かれており,1/30秒ごとに奇数,偶数と切り替わって表示されています。これが原因でどうしても画像がちらついてしまうのです。よく目立つのは文字の部分。例えばニュース等で人の名前が白色文字で表示される場合,その文字がちらついて見えます。特に大画面テレビではかなり目立ちます。

 ちなみに,最近,「チラツキを押さえる新技術を採用した」と宣伝されているテレビがありますが,これは走査線を間引くことによって生じるチラツキをなくす工夫をしたテレビです。プログレッシブスキャン方式というような名前でよばれているものがそれです。これは偶数番目の走査線の信号を隣り合う2つの奇数番目の走査線から予測・計算して作り出し,それを奇数番目の走査線と同時に表示するというような方法を使っています(他の方法もある)。毎回全ての走査線が表示されるのでチラツキはなくなります。しかし,もともと信号が送られてきていないところを,計算で予測して表示しているので,どうしても本来の画像との間に誤差が生じてしまい,完全な画像を表示することはできません。

 ところで,DVDに記録されている映像はデジタル映像であり,また全ての画像は全ての走査線を使って書かれています。間引かれてはいません。これをこのままテレビの画面に表示すればチラツキのないきれいな映像が楽しめるはずなのですが,今のテレビはあくまで間引き処理を行ったアナログ映像を表示する装置。間引きされていないデジタル映像を表示することはできません。DVDプレイヤーは,せっかくのデジタル映像をアナログ映像に変換してテレビに送っています。従って,テレビで見るDVDビデオはどうしても画質が低下してしまうのです。

 しかし,パソコンが表示している画像は間引きのないデジタル画像です。だからモニタに表示される文字はちらつかないのです。パソコンのモニタは間引いていない画像を表示できる装置なのです(一見普通のテレビとパソコンのモニタは似ているのに,テレビをモニタ代わりに利用できないのはこのため。中身は違うのです)。従って,DVDに記録されているデジタル映像をそのまま表示できるのです。走査線が全く間引かれていない映像を表示することができるのです。


 ちょっと長くなりましたが,これがパソコンで見るDVDビデオがきれいな理由です。最近はパソコンショップでパソコンを使ってDVDビデオを表示している様子をよく見かけます。ぜひ1度その画像をあなたの目で確認してみてください。チラツキのない写真のようにくっきりした画像が動くのです。これはきれい!。私は最初見たとき思わず声が出てしまいました。

 パソコンで見るDVDには欠点もあります。パソコンのモニタは普通のテレビに比べて小さいものが多いことです。一般的には15インチか17インチ。大きくても21インチまででしょう。大画面で迫力の映像を求めることは現時点では困難です。

 前にも述べたように,私の(勝手な)予想では年末から来年にかけてDVDが大ヒットします。そのころになると,(さらに勝手な予想ですが)デジタル映像がそのまま表示できるテレビもでてくるでしょう。そしてテレビとパソコンの区別も曖昧になってきます。インターネットの常時接続も一般的になってきて,テレビでチャンネルを切り換えているうちに,いつの間にかインターネットで送られてきた画像を見ていた,なんてことにもなるでしょう。

 予想が暴走してしまいましたが,いずれにしてもPCでDVD。その映像は必見です。
 

Written by 大坪 和久


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