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サイテックジャーナル
1999年10月16日号


バックアップのすすめ(前編) ファイルは消える


 突然ですがパソコンに保存している文書などのファイルのバックアップはとっていますか。トラブルは突然やってきます。対策は重要です。しかし闇雲にファイルをコピーするだけでは効果的なバックアップができているとはいえません。バックアップをとっているはずなのにファイルが復活できないということになる可能性があります。目的をはっきりさせて,適切なバックアップを行いましょう。

なぜバックアップをとるのか

 それは保存しているファイルが消えてしまっても困らないようにするためです。パソコンに保存したファイルは意図せずに消えてしまうことがあるのです。ではなぜファイルは消えてしまうのか。その原因は3つに大別されるようです。

1.装置の故障

 例えばファイルを保存しているハードディスクドライブが故障することです。昨日までちゃんと動いていたハードディスクが今日は全く動かない,全く認識されない(マイコンピュータアイコンをダブルクリックすると表示されるはずのドライブが表示されない)という現象です。

 これに遭遇するとかなりショックです。自分は何もしていないのに,突然今まで膨大な時間をかけて作ってきた文書やデータ,大切な人からもらったメールなどが全てなくなってしまうのです。実は私も数年前に体験しました。そのときはあまりにショックで起こったことをなかなか事実として受け入れることができず,立ち直るのに10日以上かかったような気がします(思い出すと今でも落ち込んでしまう...)。

 (気を取り直して!)ところで,故障してしまったハードディスクドライブを修理することはできないのでしょうか。故障した場所にもよるのですが,可能性はあまりなさそうです。ハードディスクドライブの中身は,たばこの煙が入っても壊れてしまうくらいの精密機械です。簡単にふたを開けて直すようなことはできないようです。ところで修理することはできなくても故障したハードディスクドライブからデータを取り出してくれるサービスはあります(例えばここ)。ただし,個人が簡単に頼める料金ではありません。少なくとも数十万円,ちょっとデータの量が多くなると簡単に100万円を超えてしまうような費用が必要です。取り戻したいデータの価値があなたにとってそれ以上のものであるならば,検討してみる価値はあると思います。

2.人為的なもの

 例えばあるファイルを削除する場合の操作を考えます。エクスプローラで(あるいはマイコンピュータから)削除したいファイルを選択し,削除キーを押します。このとき操作ミスで違うファイルやフォルダが選択されていると,その選択されていたファイルやフォルダが削除されてしまいます。あるいは全くの思い違いで間違ったファイルを選択しているかも知れません。また,このファイルは別のフォルダやフロッピーディスクに保存しているから消しても大丈夫だと勘違いして誤って消してしまうかも知れません。消してもいいですか?というような確認のメッセージが表示されることもありますが,いつもの調子であまり考えずに「はい」を押してしまうものです。こうやって大切なファイルは消えていきます。

 このような操作で誤って削除してしまった場合はまだ救いようがあります。通常,削除したファイルは「ゴミ箱」に保存されます。デスクトップにあるゴミ箱をダブルクリックすると,削除したファイルのリストが表示されます。ここで「削除した日」という部分をクリックすると,削除した日時でファイルが並べ替えられます(もう一度押すと新旧の順が逆転する)。誤って削除したファイルを選択し,メニューバーから,「ファイル」,「元に戻す」を選択すれば,削除したファイルは復活します。ところで,ゴミ箱の中のファイルは,ゴミ箱がいっぱいになると古いものから完全に削除されます。完全に削除されると復活できなくなってしまうので,できるだけ早く間違いに気づき復活させることが重要です。

 また,よくやってしまうミスで,ゴミ箱を使っても復活できない場合があります。上書き保存です。例えば「報告書9月.doc」という先月作った報告書を利用して今月の報告書「報告書10月.doc」を作成する場合を考えます。最初に「報告書9月.doc」を開きます。次に,開いた文書を編集して10月の報告書を作成します。ここで「名前を付けて保存」を選択し「報告書10月.doc」と名前を変更して保存しなければならないのですが,いつもの勢い(?)で,「上書き保存」を選択してしまうことがあります。これで「報告書9月.doc」は今編集した10月の内容で上書きされてしまい,本来の「報告書9月.doc」はなくなってしまいます。この場合,削除の操作をしたわけではないのでごみ箱をあさっても本来の「報告書9月.doc」を見つけることはできません。ゴミ箱から復活させることはできないのです。この上書き保存の操作,もちろんサイテックジャーナル1999年10月14日号で紹介したショートカットキー「Ctrl+S」でも同じことが起こります。注意してください(このショートカットキーを使って大切なファイルをなくしてしまっても私を責めないでね)。

 人為的なものが原因でファイルが消えてしまった場合も,装置の故障が原因のときに負けないくらい我々にショックを与えてくれます。人為的なものの場合は機械のせいにできません。自分が原因ですからこれは悔しい。拳はおのれに振り下ろすしかないのです。やってしまったときは,人間はこうやって成長していくんだ,と思うようにしましょう。
 

3.災害など

 これはまだ経験したことがないのですが,例えば仕事場が火事で燃えてしまったとか,雨漏りでパソコンや周辺機器が水をかぶってしまったという場合です。事務所に強盗が入ってパソコンなどが盗まれてしまったという場合も含まれます。上に書いた装置の故障と似ているのですが,単なる装置の故障とは異なる対策が必要なので別項目とすることにしました。

ファイルは簡単に消えるもの

 ファイルが消える原因としては主にこのようなものが考えられるのではないかと思います。ファイルは簡単に消えてしまうのです。その存在は非常に心細いものなのです。それをふまえた上で必要な対策,つまりバックアップについて考えていきましょう。

 (後編に続く)

Written by 大坪 和久


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