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サイテックジャーナル
1999年10月22日号


バックアップのすすめ(後編) 3つの対策


 前編では,ファイルが消える原因について説明しました。後編では効果的なバックアップの取り方について説明します。ここでは,前編で説明した3つの原因に対処できるバックアップ方法をそれぞれ提案します。これらを併用すると効果的なバックアップを行うことができると思います。
 

1.「装置の故障」に対応するバックアップ

 装置の故障に対応するためには,「異なる装置にバックアップをとる」ことが重要です。故障が起きても異なる装置にバックアップしたデータを利用することができます。パソコンに内蔵されているハードディスクドライブ(Cドライブ)にデータを保存している場合,異なる装置,例えばフロッピーディスクにバックアップをとります。フロッピーディスクでは容量が足りないのであれば,他のもの,例えばMO,PD,CD-RW,DVD-RAM,Zip,などなど,容量の大きい記憶装置を使います。

 また,通常使っているハードディスクドライブとは別にもう1台ハードディスクドライブを増設し,そちらにバックアップをとる方法も考えられます。増設は内蔵する方法と外付けする方法があります。どちらでもOKです。

 ここで大切なのは最初にも書いた「異なる装置にバックアップをとる」ことです。異なる装置でなければ意味がありません。注意しなければならないのは,2つの異なるドライブのように見えても実際は同じ装置である場合があることです。例えば「マイコンピュータ」アイコンをダブルクリックすると,接続されているドライブが表示されます。ここでCドライブとDドライブの2つのハードディスクドライブが見えるとします。しかしこの場合,必ずしも2台の異なるハードディスクドライブが存在するとは限りません。1台のハードディスクドライブをCドライブとDドライブの2つのドライブに分けて使っている可能性があります。このように1台のハードディスクドライブを2つに分けて使っている場合,例えばCドライブのデータをDドライブにバックアップしても,装置の故障には全く対応できないのです。装置は1台なので故障するとCドライブもDドライブも読めなくなってしまいます。注意が必要です。

 バックアップをとるには,バックアップ専用のソフトを使う方法と手動でコピーする方法があります。いずれにしても,データを記憶させるフォルダを決めておき(例えば「My Documents」),日頃から作成した文書などは全てそのフォルダに記憶させるようにしておくとバックアップがとりやすくなります。特に手動によるコピーでバックアップをとる場合はそのようにしておいた方がよいでしょう。

 もう1つ考えなければならないのは,バックアップをとる間隔です。装置が故障した場合,バックアップをとっていても,最後にバックアップをとった時点から装置が故障するまでの間に作成・編集したデータは消えてしまいます。従って短い間隔でバックアップをとった方が損失は少なくなります。しかしバックアップ専用のソフトを使うならともかく,手動によるコピーでバックアップをとっている場合,頻繁に行うことはあまり効果的ではありません。損失するデータの重要性とバックアップの手間を比べて決めればよいでしょう。それほど頻繁に装置が壊れるというわけではないので,極端に短くしなくてもいいと思います。

 私の場合,基本的には1日1回バックアップをとっています。データをネットワークで接続されている他のパソコンのハードディスクドライブにコピーしています。また,大きめの文書を作ったり,多くのファイルを更新したとき,またどうしても消えては困るデータを入力したとき等には,作業が終了した時点でバックアップをとるようにしています。

2.「人為的なもの」に対応するバックアップ

 「人為的なもの」に対応するためには「編集するあるいは編集に利用する可能性があるファイルを短い間隔でバックアップする」ことが効果的です。「装置の故障」に対応するバックアップをとっているならば,人為的なミスによって削除してしまう可能性が少ないデータについてはバックアップの対象としなくても良いでしょう。例えばニフティーサーブなどのパソコン通信の記録(ログ)や,受信したメール,ダウンロードしたソフトウエア等は,あとから読むことがあってもそれ自体を頻繁に編集する可能性は少ないと思います。つまり人為的なミスが原因でファイルが消えてしまう可能性が低いのです。またたとえ消してしまっても,「装置の故障」に対応するバックアップがあるので,そちらから復元すれば元に戻ります。編集に使われないファイルは,「人為的なもの」に対応するバックアップからはずしても良いのです。

 バックアップをとる間隔は短い方がよいでしょう。特に過去に大切なファイルを消してしまったという前科がある人は頻繁にバックアップをとることをおすすめします。前述したように編集しないファイルはバックアップの対象から外すので,バックアップするファイルサイズの合計もかなり小さくなります(ログやソフトウエアなどは特にサイズが大きくなりがち)。頻繁にバックアップをとることもそれほど難しくないでしょう。

 「人為的なもの」に対応するためには,バックアップをとる装置は同じ装置であっても異なる装置であってもどちらでもかまいません。ノートパソコンを持ち歩いて仕事をする場合などは,常にバックアップのための異なる装置を付けておくことは困難でしょう。その場合は,同じ装置にバックアップをとっても良いのです。

 私の場合,パソコンを使って行う仕事のほとんどを1台のノートパソコンで行っています。このノートパソコンでは,バックアップ専用のソフトウエアを使って,20分ごとにバックアップをとっています。もとのデータが記憶されているのと同じハードディスクドライブにコピーを取っています。このとき,受信したメールやFaxのデータ,パソコン通信のログ等については,バックアップの対象から外しています。

 なお,異なる装置に適当な間隔でバックアップをとるようにすれば,「装置の故障」と「人為的なもの」の両方に対応したバックアップをとることも可能です。

3.「災害など」に対応するバックアップ

 「災害など」に対応するためには,「バックアップデータを異なる場所に分散させて保管する」ことが重要です。こうしておけば,たとえ事務所で火災が起こってパソコンなどからデータを取り出すことができなくなったとしても,別の場所に保管していたバックアップデータを利用することができ,被害を軽くすることができます。銀行などでは各種データを数ヶ所に保存するのは常識になっているようです。

 具体的には,定期的にCD−RやDVD−RAMなどにデータを書き込み,それを別の場所に保管しておけばよいでしょう。

今すぐ始めよう

 以上,バックアップの取り方について説明してきました。バックアップは,これで完璧という状態にはなかなかならないものだと思います。バックアップ間隔をいくら短くしたって最後のバックアップ以降に作られたデータはなくなってしまう可能性があるし,パソコンのハードディスクドライブが壊れたときに同時にバックアップ装置も壊れる可能性がないとも言えません。だからといってバックアップ装置のためのバックアップ装置を取り付けようとすると,費用もかかってしまうし,バックアップ装置のためのバックアップ装置のためのバックアップ装置の必要性が気になってきます(ならない?)。バックアップの方法は,バックアップするために必要な手間や費用と,データを失ったときの損失とのバランスを考えて決めればよいでしょう。

 とにかく,現在全くバックアップを取っていない方は,すぐに消えてしまうと困るデータをどこかにコピーしましょう。そしてこれからのバックアップ方法をしっかり考えましょう。また,すでにバックアップをとっている方も,今の方法で十分なのか,もう一度考えてみましょう。

 バックアップの重要性は,一度ファイルを失ってみるといやと言うほど(本当にいやだ)よく分かります。そうなる前に,ぜひ真剣に考えてみてください。

 Written by 大坪 和久


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