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サイテックジャーナル
1999年12月20日号


2000年問題 写真で見せますその実際


 サイテックジャーナル9月9日号「パソコンで音楽を」で,インターネット経由で音楽を購入する新しい音楽の流通システム,いわゆる音楽のネット配信が登場しそうだと書きましたが,今日12月20日,いよいよそのシステムが本格的にタートしました。音楽のネット配信については,これまでもインディーズの世界などある程度小さな規模では行われていたのですが,今日サービスを開始したのは業界大手のソニーミュージックエンターテイメントです。ラルク・アン・シエルや鈴木雅之,佐野元春等の曲を,1曲350円で買うことができます。ソニーではネットで購入した音楽を聴くためのウォークマン「メモリースティックウォークマン」を発売するようです。いよいよネットで音楽を買うことが現実的になってきました。


■2000年問題,結局どんな誤動作がおこるの?

 2000年問題について最近ではいろんなところで話題になっています。2000年問題はコンピュータが西暦を下2桁だけで計算していることが原因で起こる誤動作で...,なんてことはすでにみんなが知っています。ところで,実際にどんな誤動作が起こるのか見たことがありますか?。TVなどでも,盛んに報道されている割には誤動作の具体例が紹介されていることを見たことがありません。見てみたいと思いませんか?。思いますよね。それでは私がお見せしましょう。


■パソコンの日付が狂う? 

IBM ThinkPad 220

 今回実験に使うのは,IBMのThinkPad 220というノートパソコンです。私がこのパソコンを買ったのは1994年の春頃だったと思います。「All about ThinkPad 1991-1998」(ソフトバンク株式会社)によると,発表されたのは1993年5月です。液晶ディスプレイは白黒で,CPUの能力は低く,メモリは僅か2MB,ハードディスクドライブの容量もたった80MBしかないパソコンですが,その重量は約1Kgと当時としては驚異的な軽さで,とても注目されたパソコンでした。

 このパソコンは2000年問題に対応していません。どのような誤動作をするのか試してみます。

 パソコンの電源を切った状態で2000年を迎えたらどうなるかという実験を行います。実験は以下のステップで行います。

  1. 現在の日時の確認
  2. 日時を1999年12月31日23時59分0秒にセット
  3. セットされた日時を確認
  4. 電源を切る
  5. 1分以上経ったら電源を入れる
  6. 日時の確認
画面1
 
 
画面2


画面3


 右の画面1(画面をクリックすると拡大画面が表示されます)は,「1.現在日時の確認」,「2.日時を1999年12月31日23時59分0秒にセット」,「3.セットされた日時を確認」のステップを行った画面です。

 これでこのパソコンの日時は,1999年12月31日23時59分にセットされました。この状態でパソコンの電源を切り,1分間が経過するのを待ちます。








 1分間が経過しました。このパソコンは2000年を迎えました。A happy new year。謹賀新年。あけましておめでとう。

 それでは早速日時を確認してみましょう。2000年1月1日午前0時1分か2分くらいになっているはずです。画面2を見てください。ん?,おかしい。このパソコンはタイムスリップをしてしまったようです。2000年1月1日土曜日のはずが,なぜか1980年1月4日金曜日になっています。おかしい。そうです。これが今騒がれている2000年問題の実際なのです。

 それではこのパソコンは来年以降は使えないのでしょうか。そんなことはありません。日本IBMのホームページにはちゃんと対策方法が公開されています。それによると「西暦 2000 年を越えた任意の時点で西暦 2000 年対応のオペレーティングシステムの DATE コマンドで日付を手操作で設定してください」とあります。つまり,来年になった時点で,一度日付を正しく設定すればそれ以降も問題なく使えるのです。

 画面3を見てください。ちゃんと2000年1月1日(土)と表示されています。正しい情報に基づいて正しい対策を行えば大きな問題は起こらないのです。だからサイテックジャーナル12月18日号で紹介したように,身の回りの機器について,2000年問題への対応状況を確認することが重要なのです。各メーカーは積極的に情報を公開しています。ぜひ利用しましょう。

 対応状況を知っていれば,今回のノートパソコンのように来年おかしな日付が表示されても慌てることはないでしょう。


■単純でない誤動作の内容

 ところでみなさん,今回紹介した誤動作の内容,おかしいと思いませんか。TVのニュース等では,2000年問題とはコンピュータが西暦を下2桁だけで判断するので,2000年を1900年と勘違いしてしまうことによって起こる問題,と説明されています。しかし今回は1900年ではなく1980年になってしまった。しかも年だけではなく月日も間違ってしまい,1月1日が1月4日になってしまいました。

 世の中に存在する各社のパソコンやその他のいろんな電機製品は,日付データをそれぞれいろんな計算に使っています。誤動作の内容についてもいろんな内容があるようです。1900年になるものもあれば今回のように1980年になるものもある。あるいはもっと大胆な誤動作を起こす装置もあるかもしれません。どのような誤動作を起こすかは,日付データをどのように使っているかによって決まるのです。

 対応の仕方もいろいろあります。今回のケースでは来年日付を設定しなおすという比較的簡単な作業で対応することができます。しかし,機器によっては機器を制御しているソフトウエアを書き換える必要があったり,メーカーに送って対策をしてもらわなければならないものもあります。

 いずれにしても,メーカーに正しい対応状況を確認することが大切です。安易に問題ないだろうと判断することは危険です。


■よい2000年を迎えるために

 少しは2000年問題を実感していただけたでしょうか。私たちはこのような誤動作を起こす可能性のある装置に囲まれて生活しているのです。私の部屋にある電機製品だけでも,今回紹介したノートパソコンを含め3つの製品について何らかの対策が必要であることが分かっています。みなさんももう一度真剣に考えてみてください。サイテックジャーナル12月18日号等も参考にして,ぜひ最低限の対策だけは行っておくことを強くお勧めします。みんなでよい2000年を迎えましょう。

Written by 大坪 和久


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